インドアゴルフは全国的に店舗が増えており、省力運営が可能な店舗ビジネスとして注目されています。
- 年商◯千万円も可能
- 無人で収益化
- 未経験でも開業OK
そんな広告も多く見かけるようになりました。
確かに、うまく運営すれば利益を出すことはできます。しかし、実際に経営してみると、“儲かる”と断言できるほど単純ではありません。
インドアゴルフはれっきとした店舗ビジネスであり、地域の生活圏を相手にするローカル商圏型ビジネスです。飲食店と同じように「席数(=打席数)」が限られているため、売上の上限が明確に存在します。また、立地や人口密度、競合環境によっても収益性は大きく変動します。
私たちも2020年にアイエイトゴルフ1号店「i8GOLF&FITNESS下諏訪店」を開業しましたが、黒字化までにおよそ2年を要しました。さらに昨今の物価高や電気代上昇の影響で、2025年には価格改定(値上げ)を実施せざるを得ませんでした。
そんな経験をした私たちだからこそ言えます。
だからこそ、正しい知識と現場理解が必要です。
開業を検討している方にとっては、「失敗しないために何を準備すべきか」。
すでに運営を始めている方にとっては、「どうすれば今の状況を立て直せるのか」。
この記事では、成功談ではなく、“うまくいかなかったリアル”と、それをどう乗り越えたかを中心に、私たちの経験を惜しみなくすべて公開します。
読むのは少し長いですが、
- これからインドアゴルフ経営を始めたい
- 今まさにインドアゴルフ経営で悩んでいる
そんな方にこそ、きっと役立つ内容です。
気になる方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
お気軽にご相談ください
2020年に1号店(下諏訪店)の開業。すべては“手作り”から始まった

2020年5月5日、長野県下諏訪町に24時間インドアゴルフ練習場「i8GOLF&FITNESS下諏訪店」をオープンしました。ここから、私たちの挑戦は始まりました。
「できることは全部自分たちでやる」。その方針が、後に“遠回り”であることを思い知らされる最初の一歩でした。
下諏訪町のとある空き物件を改装してスタート
下諏訪店は、2階建て・約100坪の空き物件を全面改装して開業しました。もともとあった内装を活かしつつも、天井高・安全性・防音・遮光・空調など、インドアゴルフ特有の課題をクリアするために相応の投資が必要でした。考慮不足が故に、後に追加工事も必要になりました。
当時(2020年)は、長野県内にインドアゴルフの成功事例がほとんどなく、出店そのものが“実験”に近い状況。そのため、フィットネスジムを併設して収益リスクを分散する構成としました。
結果、店舗改装費・シミュレーションゴルフ・フィットネス機器で約5,000万円超の初期投資となりました。
実際にどれくらいの費用がかかるのか、気になる方はこちらの記事も参考にしてください。
フィットネスを参考にした「24時間無人運営」モデルの構築
1号店での大きな挑戦が、24時間無人運営という新しい形態でした。
当時、インドアゴルフの営業形態としては、まだ全国的にも珍しく、予約システムとシミュレーションゴルフを連動させて打席管理する仕組みは、下諏訪店がファーストユーザーでした。
hacomono導入事例 | 24時間型複合ゴルフスタジオ「i8 GOLF & FITNESS」
設計の参考にしたのは、同時期に急成長していた24時間無人型フィットネスジム。
- 無人でも安心して使えるセキュリティ環境
- システムで入退室・利用を管理できる仕組み
- 夜間などの無人帯でも対応できる遠隔体制
これらを一つずつ整備しながら、“無理なく運用できる無人モデル”を実現しました。
この経験から得た最大の成果のひとつは、
という確信を得られたことです。
集客はすべて自作。しかし結果は出なかった
想定以上の設備コストにより、広告代理店を使う余裕はなく、チラシ・ホームページ・WEB広告すべてを自社で制作・運用となりました。
チラシ配布、道路看板、新聞広告、公式LINE発信、SNS広告、リスティング広告など、考えつく限りの手段を試しました。
しかし、どれも大きな反響にはつながらず。「動いているのに成果が出ない」状態が続きました。
イベントや無料体験会も行いましたが、目的来店は少なく、会員化率も低迷。
今思えば、集客施策の費用を抑えた分だけ遠回りしたというのが率直な感想です。次で詳しく振り返っていきます。
実際にやってみて分かったこと
- インドアゴルフ店舗の施工は、天井高・防音・空調など特有の課題が多く、改装費が膨らみやすい。
- 24時間無人のモデルは、インドアゴルフでも成立する。
- マーケティングのノウハウがない状態では、想定以上に集客に時間がかかる。
集客に苦戦。広告もイベントも“響かなかった”
開業初期の最大の壁は、「人が来ないこと」でした。チラシを撒いても、SNSを更新しても、手応えがない。
この経験から、“ターゲット不在の集客”がいかに危険かを痛感しました。
SNS広告・Google広告を自力で運用
出稿も運用もすべて内製化。クリック数は取れても、来店には結びつかない。「認知されているのに行動されない」状態でした。
その後、トライ&エラーを繰り返し、効果的なターゲティング手法やクリエイティブを確立するまで、広告費が積み上がってしまいました。
ドラコン大会や無料レッスン会も実施


店舗を知ってもらうために、ドラコン大会や無料レッスンなどのイベントも開催。
一時的な盛り上がりはありましたが、常連化率は低く、単発利用で終わるケースが大半でした。
いわゆる“イベント客”は月額プランへの成約率が低く、安定的な売上にはつながりませんでした。
若者・女性ターゲットの幻想
最近よくこのような情報を耳にします。
- 最近は若者のゴルファーが増えている
- 女性にも人気
- インドアゴルフは若い層にウケがいい
これは、各種メディアでの報道や、ゴルフ関連メーカーやインドアゴルフフランチャイザーのポジショントーク、SNSなどで発信しているインフルエンサーが若者中心なため、そうした印象を受けがちです。
ただ、これはあくまで局所的な現象です。大局はまったく真逆。
彼らが「ゴルフを継続的に楽しむ層」であり、可処分所得・時間の面でも安定しています。
一方で、20〜30代の若年層や子育て世代は、可処分時間・所得ともに少なく、「たまにレジャーでやる」「たまに付き合いでやる」があっても、本格的な趣味・習慣・生きがいとして、定期的に通う層ではありません。
事実、『レジャー白書2024』によると、ゴルフ練習場の参加率は30代以降の男性で急増し、特に50代男性が11.5%で最も高い水準です。
一方、20代以下の参加率は3%前後にとどまり、SNSで見かける“若者ゴルファー”はあくまで少数派。
つまり、インドアゴルフで確実に収益を上げるには、40〜70代男性を主軸ターゲットに据えるのが合理的なのです。
ゴルフ(練習場)参加率 2023年(レジャー白書2024)
| 年代 | 男性(%) | 女性(%) |
|---|---|---|
| 全体 | 8.6 | 1.9 |
| 10代 | 4.9 | 4.5 |
| 20代 | 5.6 | 2.4 |
| 30代 | 8.1 | 0.9 |
| 40代 | 8.1 | 1.8 |
| 50代 | 7.1 | 1.3 |
| 60代 | 9.8 | 2.7 |
| 70代 | 14.7 | 1.4 |
もちろん、若者や女性にゴルフを楽しんでもらいたい気持ちはあります。
しかし、この層をメインターゲットに据えるとゴルファーの“マスに刺さらない”のが現実です。
経営的に見ると、このコア層を外すことは短期黒字化を目指すには、リスクになります。
そもそも「インドアゴルフ」を知らない人が多い
この記事を読んでいる方は、おそらくインドアゴルフを理解しているはずです。ですが、一般消費者にとって「インドアゴルフ」という言葉はまだ馴染みがありません。
検索や広告で“ゴルフ”と打ち込んでも、最初に出てくるのは屋外ゴルフ練習場やショップ。
つまり、インドアゴルフはそもそも市場認知がまだ低いサービスなのです。
インドアゴルフは、いわば「新しい文化」。
最初に来るのは、新しいものに敏感な層=アーリーアダプターやアーリーマジョリティ層です。
ここを理解していないと、ホームページを作っても“見てもらえない・伝わらない・動いてもらえない”。
この「市場構造のズレ」が、私たちが集客に苦戦した最大の要因でした。
実際にやってみて分かったこと
- ゴルフ人口の中心は40〜60代男性であり、集客の主軸はここに置くべき。
- インドアゴルフはまだ認知が低く、説明力がないと来店につながらない。
- 「誰でもOK」な訴求は、結果的に“誰にも刺さらない”。
黒字化のきっかけは、松本店での再挑戦だった

下諏訪店での2年間の試行錯誤を経て、2022年2月には長野県松本市に、3号店となるi8GOLF松本店をオープンしました。
同じシミュレーションゴルフ、同じサービス内容、同じ料金体系での展開。
それでも結果はまったく違いました。
松本店はオープン初月で150名以上の月額会員を獲得。下諏訪店と比べ、早期で黒字化を図ることができました。
それまでの経験をもとに、「儲からない構造」をどう改善したのか。
その鍵は、“誰にどう届けるか”を徹底的に見直したことでした。
ターゲットを40代以上男性に絞ったことが転機


まず行ったのは、「誰に訴求するか」を明確にすることです。
SNSで映える若者層ではなく、40〜60代男性のアマチュアゴルファー層に完全にフォーカスしました。
この層はゴルフ歴が長く、自分のスイングを分析したいという明確な目的を持っています。
また、仕事帰り・休日早朝などに利用しやすく、24時間営業との相性が良い層でもありました。
広告やLPでは「楽しく」や「上質でおしゃれ」などキラキラしたワードではなく、
広告媒体は、ターゲティングを詳細に行えるWEB広告を主軸に。結果、広告費を抑えながらも予約率・会員化率が大幅に改善しました。
導線設計と店舗認知を徹底的に整備
次に、広告よりも“導線の整備”に注力しました。ホームページ・予約ページ・公式LINEの流れを、最短で予約まで到達できる形に整理。
また、検索対策(SEO/MEO)にも注力することで、「地域名×キーワード」の自然検索からの流入が安定しました。
結果、広告をほとんど出さなくても新規問い合わせが継続的に発生。検索行為を行う顕在層のため契約率も高い状態でした。
“儲かる仕組み”は、派手なキャンペーンではなく、
から生まれることを実感しました。
集客コストを抑えながら利益率を改善
松本店では、月間広告費を削減しながら会員獲得に成功。利益率は安定し、オープン初年度から黒字化を達成しました。
ここでようやく、インドアゴルフ経営の「儲かる構造」が見えてきました。
広告を増やすより、来店までの導線を最適化することが最大の集客。
そして、継続して通ってもらうためには、“快適さ”や“分析環境”といった実利を提供することが重要です。
実際にやってみて分かったこと
- 成功の鍵は「誰に届けるか」を明確にすること。
- コピーは「楽しい」ではなく「上達」「効率」「分析」など実用的ベネフィットを重視すべき。
- 広告量よりも「導線設計」が重要。
立地の違いが“結果”を左右した
同じブランド、同じ料金、同じシミュレーターを使っているのに下諏訪店と松本店では、結果がまったく違いました。
この差を生んだ最大の要因は、経営スキルでも広告戦略でもなく、「立地」そのものです。
インドアゴルフの出店では、理想の物件を探すのは想像以上に難しいものです。天井高・防音・駐車場・導線など、条件をすべて満たす場所はほとんど存在しません。
多くの場合、「どこかを妥協しなければオープンできない」のが現実です。
下諏訪店も、まさにそのパターンでした。決して好条件とは言えない立地でも、工夫次第で集客はできます。
しかし、同じ努力をするなら、少しでもベターな立地を選ぶことが何倍も効率的です。
立地は経営努力で変えられない要素。
だからこそ、
それが、インドアゴルフ経営の現実的な判断と言えます。
下諏訪店|湖と山に囲まれた「商圏が狭い立地」

下諏訪町は諏訪湖のほとりに位置し、周囲を山に囲まれています。
車で15分圏内に諏訪市・岡谷市・茅野市・塩尻市が含まれ、地図上ではおよそ10万人(20〜69歳は約5.8万人)の人口規模です。

しかし実際には、諏訪湖や塩尻峠などによって移動経路が大きく分断されており、車で15分圏内でも来店できる範囲は三日月型に限定されます。実際のデータでも、塩尻峠を越えて来店する利用者はほとんどおらず、諏訪湖の対岸からの来店もわずかでした。
つまり、「地図上では15分圏でも、地理的な要因で実際の商圏は狭まる可能性がある」というのが現実でしょう。
また、商圏である下諏訪町、岡谷市・茅野市にはアクセスのよい屋外ゴルフ練習場が存在しません。
つまり、ライバル不在の市場でした。
当初は「競合がいない=有利」と考えていましたが、そもそもゴルフ人口自体が少ないという仮説も、今となっては合点がつきます。つまり「競合がいない」のではなく、「需要が少ない」地域だった可能性が高いのです。
松本店|人口密度が高くアクセスも良い立地

一方の松本店は、南松本駅から徒歩5分に位置し、平地でアクセスも良好。
車で15分圏内には松本市・塩尻市・安曇野市の一部が含まれ、総人口は約25万人(20〜69歳は約15万人)に達します。

さらに、松本市には屋外のゴルフ練習場が複数存在します。
特に松本店のすぐ近く(約300メートル先)には、地域でも人気の屋外のゴルフ練習場があります。
当初は「競合が多い環境での新規参入」に懸念がありました。
しかし結果として、松本店は下諏訪を大きく上回るペースで集客に成功しました。
顧客の声からわかったのは、
- インドアはインドアでしかできないことがある
- アウトドアはアウトドアでしかできないことがある
という考え方を持たれていた点です。
実際に、両方を組み合わせて利用する会員も多く、屋外のゴルフ練習場(打ちっ放し)とインドアゴルフは必ずしも“競合関係”ではないことが明確になりました。
むしろ、
という指標にもなります。
その意味で、松本のように屋外施設が多いエリアは、出店地としてはむしろ“確実に市場がある”安心材料になりえるのです。
数字で見る両店の差
| 指標 | 下諏訪店 | 松本店 |
|---|---|---|
| 商圏人口(実効) | 約5.8万人 | 約15万人 |
| 屋外練習場の有無 | なし | あり(近隣300mに人気施設) |
| 開業初月会員数 | 約30名 | 約150名 |
下諏訪店の開業時は、新型コロナによる緊急事態宣言下ではありましたが、この数字から見ても、立地と環境の力が結果を大きく左右していることが分かるのではないでしょうか。
人口密度、アクセス導線、そして「ゴルフ人口の多さ」。これらが揃う地域では、広告をかけずとも適切に露出を増やすことで自然に成果が見込めます。
※商圏人口は、総務省統計局「jSTAT MAP」(国勢調査2020・1kmメッシュ)による推計値。各店舗の住所を中心とした「車で15分圏」から抽出。
実際にやってみて分かったこと
- 立地は努力では覆せない“環境要因”。
- 商圏人口・導線・地形などの要素が集客力を大きく左右する。
- 「競合がいない=チャンス」ではなく、「市場がある=チャンス」である。
インドアゴルフ経営で見落としがちなコスト
インドアゴルフ経営で最も見落とされがちな点は、「黒字を阻む隠れたコスト」です。
売上が上がっても、運営を続けるだけで固定費や消耗費が想像以上にかかります。
私たちもこの「コストの落とし穴」に、何度も苦しめられました。
電気代のインパクトは想像以上
シミュレーターやプロジェクター、エアコン、照明など、電力を大量に使うインドアゴルフでは、電気代が月10万円を超えることも珍しくありません。ましてやこの物価高。政府の補助金の有無でも大きく光熱費が変わってきます。
特に夏と冬は冷暖房がフル稼働し、費用が一気に跳ね上がります。
また、24時間営業を維持するためには夜間の照明・防犯設備も常時稼働が必要。「無人運営=低コスト」と思われがちですが、エネルギーコストはむしろ高い業種です。
消耗品コストもバカにならない

シミュレーションゴルフ機器を稼働させ続けるためには、意外と細かい消耗品が発生します。
- スクリーン(年1交換) … 約5〜8万円×打席数
- マット(年1〜2回交換) … 約3〜5万円×打席数
- ゴルフボール(半年で約30球交換) … 約1万円×打席数
- プロジェクター部品(年1回交換) … 約1万円×打席数
「数万円単位の交換」が年に何度も発生し、これが積み重なると年間数十万円規模に。
経営を圧迫する“地味なコスト”です。
機材トラブルは避けられない
シミュレーターは精密機器の集合体です。どんなにメンテナンスしても、年に数回はトラブルが発生します。
下諏訪店では、開業から5年間で次のような修理が発生しました。
- プロジェクター本体入れ替え:3台
- PC電源ユニット交換:1回
- センサー基板交換:2回
- 分析カメラ交換:1台
- ケーブル断線:複数回
これらを部品を取り寄せたり、メーカー修理に出すと、1件あたり数万円。修理中は打席を止めざるを得ず、売上機会の損失にもつながります。
これにオートティアップやスイングプレート(傾斜システム)などの機器もあれば、さらなるトラブルへの対応工数はかかります。
今あげたのは、ハードに関する事例ですが、ソフトウェアに関連するトラブルも発生します。
人件費は“ゼロ”にはならない
「無人運営で人件費ゼロ」という謳い文句を、よく目にします。
しかし、実際には人が動かないと運営できません。
私たちの経験上、
最低賃金は年々上がっており、人件費の圧力は避けられません。
さらに、日常業務の中でスタッフが対応しなければならない業務は多岐にわたります。
- 初回来店の対応
- 契約のご案内
- 契約変更・退会の処理
- トラブル時の対応
- 清掃・メンテナンス
- 問い合わせへの対応
- 未払い・決済エラー対応
これらを誰かがやらなければ、店舗は維持できません。
特に「未払い・決済エラー対応」は死活問題で、放置しておけば売上は減少。残念ながら、連絡が付かず踏み倒されてしまうケースもあります。こまめな対応が必須な業務です。
「人件費ゼロで運営できます」──それは現実的ではありません。
オーナー自身が対応すれば確かに人件費はゼロにできます。しかし、365日対応することは現実的に不可能です。
既存の社員やスタッフに任せるにしても、業務量が確実に増えます。つまり、“誰かの時間”という形で人件費は必ず発生するのです。
また、24時間・無人運営という業態の特性上、「無人時のトラブル対応」が発生します。これを放置すれば、顧客満足度や信頼は低下し、退会へと直結します。
私たちもこの課題を解決するために、コールセンターを構築し、無人時の一次対応を代行する仕組みを整備しました。

しかし、これも当然ながらコストがかかります。アイエイトの場合は、複数店舗でコールセンターの費用を分担しあうことで運営できていますが、単独ではまず無理でしょう。
無人運営を実現するには、無人を支える仕組みが必要。その仕組みこそが、人件費や外注費という形で経営に跳ね返ってきます。
毎月の固定費が意外と多い
他にも、家賃、シミュレーション機器の保守料、システム利用料、通信費など固定費が少なくありません。
「広告費を抑えて黒字化できた」と思っても、毎月のランニングコストを積み上げると、利益がほとんど残らない。
これが“儲かっているようで儲かっていない”構造の正体です。
黒字でも「資金繰りが苦しい」ことはある
月次では黒字でも、消耗品や修理費が一時的に重なると、キャッシュフローがマイナスになります。
とくに初期投資を借入でまかなっている場合、返済と維持費のバランスを見誤ると資金が回らなくなります。
「黒字=余裕がある」と思われがちですが、インドアゴルフはキャッシュフロー管理が非常にシビアな業種です。
実際にやってみて分かったこと
- 電気代・保守費・消耗品などの“見えない固定費”が大きい。
- 「無人運営=低コスト」は誤解。実際には人が動く部分が多い。
- 黒字でもキャッシュフローが苦しくなる構造を理解しておく必要がある。
価格設定とLTV設計が、インドアゴルフ経営の収益を決める
インドアゴルフは「ストック型ビジネス」と言われますが、実際は定員制ビジネスです。
打席数という物理的な制約がある以上、集客を増やしても売上の上限は決まっています。
そのため、黒字を安定させるには、LTV(顧客生涯価値)の設計がすべての起点になります。
ストック型ビジネスとは
本来のストック型ビジネスとは、顧客が積み上がるほど売上が右肩上がりに増える構造を指します。
代表的な例としては以下のようなものがあります。
- フィットネスジム:同じ50坪でも、マシンを多数配置できるため会員を数百人規模で抱えられる。
- SaaS(クラウドサービス):物理的な制限がなく、サーバを拡張すれば世界中に提供できる。
- サブスク型EC(定期便):倉庫や物流でカバーできる限り、会員数に上限がない。
これらの共通点は、「物理的キャパシティが拡張できる」という点です。
インドアゴルフは“キャパシティが固定された定員型”
一方で、インドアゴルフは全く異なります。
たとえば、50坪の店舗に打席を設置できるのはせいぜい 5〜6打席。
つまり、同じ坪数でもフィットネスジムと比較すると収容力は圧倒的に少ないのです。
- 1打席あたり約40名が定員上限(予約枠ベース)
- 5打席でも最大200名程度が限界
- それ以上増やそうとすると、別店舗を出すしかない
この“定員の壁”を超えると、予約の取りづらさが不満につながり、退会の原因にもなります。
“予約が取れないで辞める”──これは最悪のシナリオです。
このように、打席数という絶対的な“物理的制約”があるため、
フィットネスジムのようにマシンを追加して収容力を増やすことはできません。
結果として、「ユーザーが増えるほど利益が積み上がる」という構造にはならないのです。
単価を下げれば、定員を埋めても儲からない
会員数を早期に獲得するため、「安価な料金に設定する」という戦略をとってしまいがちです。
しかし、それでは単価の安いプランで上限を埋めてしまうだけです。
安い会費で40名が埋まっても、家賃・電気代・保守費を差し引けばほとんど利益は残りません。
逆に、高単価でも“納得できる価値”があれば継続してもらえる。
単価を下げるのではなく、価値を上げる努力が必要なのです。
だからこそ「単価×継続率×稼働率」で勝負する
会員数を増やすことよりも、会員1人あたりの価値を最大化する視点が重要です。
これがLTV(顧客生涯価値)を伸ばすという考え方です。
つまり、インドアゴルフの経営は“ストックを積むビジネス”ではなく、“上限をどう最適化するかのビジネス”です。
価格設定(単価)
料金を安くして会員数を増やしても、最終的には利益を圧迫します。
打席数が限られている以上、価格は“集客”ではなく“利益率”を基準に設計すべきです。
継続率(退会率)
退会を防ぐことがLTV向上の最大の鍵です。
清潔さ・快適さ・安定稼働。小さな積み重ねが離脱防止につながります。
稼働率(時間あたりの利用効率)
ここでいう稼働率とは、単に「どれだけ埋まっているか」ではなく、時間の使われ方を指します。
多くの店舗では夜間(18〜22時)に利用が集中し、朝・昼・深夜は空き時間になりがちです。
この偏りが、売上の上限を下げる要因になります。
「ピークタイム以外の時間を、どれだけ有効に使えるか」
これが収益を安定させるカギです。
たとえば、
- 早朝利用の社会人層
- 日中利用のリタイア層
- 深夜利用の夜型ユーザー
こうした層を意識的に取り込むことで、
同じ定員数でも売上を底上げすることができます。
インドアゴルフは、無人型であっても“量の勝負”はできません。
だからこそ、単価・継続率・稼働率の3つをどれだけ精密に設計できるかが黒字化を左右します。
「会員数を増やす」よりも、「一人あたりの価値を高める」ほうが効果的です。。
不随サービスで単価を上げる

LTVを向上させるための最も効果的な手段は、ゴルフレッスンなどの付加サービスです。
特に
問題は、レッスンを提供できる人材が非常に限られていること。全国的にプロやインストラクターの人材争奪戦が起きています。
もしオーナー自身や店舗スタッフがレッスンを提供できるなら、それだけで他店より圧倒的に有利です。
事務しかできないスタッフだと、その業務量に比べてコストが見合わないことが多くなりがちです。勤務中に“プラスの売上を生む仕事”ができる人材こそが、店舗の利益を支える存在になります。
定着率を上げる仕組みづくり
LTVを上げるもう1つの方法は、継続率を高めることです。
そのために大切なのは「環境」と「関係性」。
- 店舗の清潔さ・快適さを維持すること
- 適正な会員数を守り、予約ストレスを減らすこと
- 会員のゴルフ熱を一緒に高める運営をすること
ゴルフコンペや試打会などのイベントは効果的ですが、労力がかかり、関心層も限られるため、最適解は私たちも”模索中”です。
ただ確実に言えるのは、無人運営だからと言って、放置された会員は離脱するということです。
「心地よく、続けやすい環境」を維持することがLTV向上の第一歩です。
フォローすべきは「これから始める人」
さらに一歩踏み込むと、ゴルフ上級者は自走しますが、問題は「これからゴルフを始めたい」ビギナー層です。この層は、教えてくれる人がいないと早期に離脱します。
「ゴルフを始めたいと思っても、誰も教えてくれなかったから、そのままゴルフをやめてしまった。」
これは最悪のケースです。
こうした離脱を防ぐには、初心者が安心して練習できる環境づくりが欠かせません。
無人運営であっても、人のサポートを感じられる店舗でなければ、長期的な成長は難しいのです。
実際にやってみて分かったこと
- 打席数=会員数の上限。定員ビジネスであることを前提に設計すべき。
- 利益は「単価×継続率×稼働率」で決まる。
- 不随サービス(レッスンなど)は最も効果的な単価アップ施策。
まとめ|インドアゴルフ経営は「誰でも儲かる」ではない
ここまでお伝えしてきた通り、インドアゴルフの経営は決して簡単ではありません。
「無人で儲かる」「月商〇百万円」などの派手なキャッチコピーもありますが、現場を経験した私たちから見れば、それはほんの一部の成功例にすぎません。
安定的に利益を生み出すために必要なのは、次の3つの視点です。
1.集客をどう最適化・最大化するか
誰に、何を、どう伝えるかを明確にすること。
SNS広告やイベント頼みではなく、ターゲット設計・導線設計・地域SEO(MEO)といった“基盤”を整えることが重要です。
まずはメインの「30代以上の男性ゴルファー」にしっかり届く仕組みをつくれれば、派手な広告を打たなくても安定的に集客できます。
2.LTV(顧客生涯価値)をどう最大化するか
打席数・定員・稼働時間など、物理的な上限があるビジネスだからこそ、「単価 × 継続率 × 稼働率」を高める設計が欠かせません。
料金プランの最適化、レッスンなどの付加サービス、そして予約ストレスを減らす運営改善。これらの積み重ねがLTVを押し上げます。
3.ランニングコストと運営体制をどう最適化するか
電気代・保守費・人件費などの固定費は、見落とされがちな落とし穴です。「無人運営=人件費ゼロ」ではありません。
契約・清掃・トラブル対応・問合せ対応。実際には人の手が必要な場面が多く、効率的な仕組みづくりが利益を左右します。
この3つのバランスを設計できれば、派手な施策がなくても、安定して利益を生む“再現可能なモデル”が構築できます。
私たちは、下諏訪から始まり、横浜・松本・豊橋・富山・高崎と展開する中で、この構造が確実に機能することを実感しています。
再現できる理由は、“きれいごとではなく現実から作ったノウハウ”があるからです。
成功談よりも、失敗から学んだリアルを共有します。
この記事は、理想論でもマーケティングトークでもありません。
「やってみたら想像以上に大変だった」
「けれど、そこから見えてきた改善策があった」
そんなリアルな“現場の記録”です。
これからインドアゴルフを始めようと考えている方、今まさにインドアゴルフ経営で困っている方に、ぜひ参考にしていただければと思います。
失敗の理由を知ることが、成功の仕組みを作るための最短ルートです。
実店舗の運営ノウハウを、次に挑戦する人へ
私たち i8GOLF は、実際に自社で複数の店舗を運営しながら、これから開業を目指す方、そしてすでに運営を始めて悩んでいるオーナー様に向けて、「フランチャイズ事業」および「インドアゴルフ開業・運営サポート」を提供しています。
- 開業してみると、思ったよりも集客が伸びない。
- 電気代や保守費が想定より高い。
- 日々の運営に手いっぱいで、改善に手が回らない
そんな声を多く聞きます。
実はその悩み、私たちもすべて経験してきたことです。
私たちは、2020年に1号店を開業して以来、さまざまな環境で試行錯誤を重ねてきました。
その過程で得た、“現場を理解した上で設計された再現性ある仕組み”が、今の私たちの強みです。
もしあなたが、
- これからインドアゴルフを始めたい
- すでに運営しているが集客や収益に伸び悩んでいる
どちらの状況であっても、私たちは 開業から安定運営までの道筋を一緒に描くことができます。
今抱えている課題や不安を、まずはお聞かせください。
同じ現場を経験してきた私たちが、具体的な解決策をご提案します。
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